2015年10月19日月曜日

内的な動機づけと外的な動機づけ


モチベーションmotivation)は、動機づけと訳されていますが、一般的には「やる気」「意欲」「士気」などの意味で曖昧に使われています。
それにしても、動機づけという日本語訳は、モチベーションの意味を理解するためにも、また高める上でも重要です。
たとえば、仕事に対して「一生懸命働きたい」あるいは「目標を達成したい」と意欲を持っているひとがいるとします。反対にそうでない人もいます。
そこでその差を追求していくと、両者には共通した違いはあることが発見できます。
意欲的に行動をしている人には、「みんなに認められたいから」とか「もっと進歩したい」とか、「お金がもらえるから」とか個人的な理由が発見出来ます。
動機が先にあるから、意欲が後からわいてきています。
そうだとしたら、意欲的でない人の場合でも、意欲的になる動機が発生したら、あるいは与えてあげたら、意欲的に行動するはずだという発想に端を発しているのが「動機づけ」です。


どうすれば動機づけは起こるのでしょう?
たとえば大人がクルマにワックスをかけていたりすると、こどもがぼくにもやらせてと駆けよって来たりします。
大人にとってはイヤイヤしている仕事であっても、こどもには遊びになるのは意欲の違いです。
この場合なら、こどもにまず好奇心から関心が高まり、自発的に意欲が高まった結果です。
動機づけには、このような内的な動機づけと外的な動機づけがあります。

たとえば「ワックスがけを手伝ってくれたらおこずかいあげるよ」と言われてワックスがけをするのが外的な動機づけです。
外的動機づけは、会社などでは従業員の士気をあげるために、しばしば用意されます。
そのもっとも分かりやすい例が「インセンティブ」です。
評価制度、ボーナスなどもその範疇ですし、成果主義を導入したケースも同じです。
外的動機づけは幼少の頃から学習していて、なじみ深いのですが、その弊害が少なくありません。
たとえば、評価制度やボーナスのことを、馬に人参のニュアンスで受け取るひともいますが、この考え方には問題があります。
これらは経営技術をより科学的、人道的に進めて来たプロセスで生まれたことにすぎません。
そもそも会社勤めを選択し、任意の会社に就職した時点から、担うべき役割があるのが普通です。あるから採用されているわけです。
つまり明白な義務があります。その義務を果たしやすくするひとつとしてインセンティブがあるにすぎません。
良い会社とは、どれだけ収益が出ているかで計られたりしますが、本当はトップ\のやりたいことが実行できている会社です。
「やりたいことはできていないが、利益が出ている会社」とは、個人に置き換えると「収入は多いけど、自分のやりたいことではないんだよね」というのと同じです。
個人なら幸福とは言いがたい。
会社も同じで、トップのやりたいことが出来ていない会社は良い会社ではありません。
そのトップのやりたいことを実現するのが従業員の仕事です。
従業員が先にいて仕事があるわけではない。
仕事が先にあって従業員がそれをやり遂げるために集まってきた。
だから仕事に自分を合わすのが正しい姿で、自分にこの仕事は合わないとは言うべきことではない。
仕事をするとは、ほとんどの場合、黒沢明監督の名作映画「七人の侍」と同じシチュエーションと考えられます。




映画「七人の侍」を簡単に説明します。
村を襲撃しては食料など盗んで行く野盗を退治するために、村人は七人の侍を集めます。 村人は、その対価に一定の金銭を支払う約束をします。
命がけになるかどうかは契約になくても、野盗を退治するのは契約に織り込んである条件です。それが楽勝の場合もあれば、命がけになることもありますが、退治が仕事です。侍たちは、退治する約束を果たすためには、命がけでも戦う。
この理屈は、現代社会で会社勤めする場合でも、まったく同じです。この点がぶれてしまうと、考え方も働き方も、すべておかしくなります。
朝9時出勤、夕方6時終了が定時。
目的を果たしたか、そうでないかに関わらず、その時間、拘束されていたら給料がもらえるというなら、給料の性質は拘束料あるいは通勤給です。もともと会社勤めとは、自己のベストを尽くすのが当たり前です。
最近は自律的な仕事の進め方を尊びますが、主体性をもって目的を達成するのが、果たさなければならない義務です。面白そうだからやってみたいと主体的にやるのと、周りから言われてやるのでは、モチベーションの高さも違います。
モチベーションの違いは作業する態度や表情にも表れます。
「自分が起こした行動」の方がダイナミックなのは「楽しさの実感」「変化する実感」を強く感じるからです。
「内的動機づけ」と「外的動機づけ」どちらがどうかというと、
自分の内面から起こった意欲の方が強く、しかも長期に持続しやすい傾向があります。
先にあげた「七人の侍」は、ハリウッドで「荒野の七人」としてリメイクされ、やはり興行的にヒットしました。日米通して感動が起こったのは、集められた七人の行動がインセンティブという「外的動機づけ」より「内的動機づけ」による行動だった点です。

村人が汗を流して作ったものを、暴力で奪って行く非道に対する正義心と村人を放っておけない心情、さらにはそれを全うすることで、自分を価値あるものと思いたいとする自分の問題としている点です。

「七人の侍」は内的な動機づけと外的な動機づけの違いを鮮やかに描いた作品でした。観客は内的動機づけで戦う侍に共感しました。それは一般企業でも同じで、リーダーシップの重要なポイントになります。
この思いによって対価に見合わない高いモチベーションの発揮を実現しています。これと同じことは、どんな職業にもあてはまります。
どんな職業でも、人の役に立つことで自分を価値あるものに高めることはできます。
反対に、給与を実質拘束料、通勤給にしていると、どんどんモチベーションは下がります。
人の役に立つことで自分を価値あるものに高めることはできます。
そのような考えができるようになるために、周りの人からヒントをもらうことはできます。
話を聴くのも意欲刺激になり「外的動機づけ」になります。
しかし、最後の選択は自分です。つまり、内的動機づけは自分のために自分がします。







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